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だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠10(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 頁

青空文庫

その歌は、例によってでたらめではあるが、それはいつ、何の時、どこかで一度は鼓膜に触れたことのあるものが、順序不同に口をついて出るのだから、あながち創作ともいえますまい。そこでちょうど、巻かせた糸の一たばが終りになりました。

「どうも御苦労さま」

「お嬢さん、殿様が浪人をするのは、何か悪いことをしたんだろう?」

「いやだ、悪いことなんかする殿様じゃありませんよ」

「だッて悪いことをしなければ、浪人するはずがないじゃないか?」

「そうとばかりは、言われなくってよ」

「それでも、立派に殿様でいられる人が、浪人をするのは、つまり何か悪いことをして、免職になったんじゃない?」

「そんなことがあるものですか」

兵部の娘は、無意識に駒井の弁護をしてきたが、思うように茂太郎の耳には響かないと見えて、

「いい人だってお前……いい人だって、悪いことをすることもありまさあね」

茂太郎から先手を打たれて、兵部の娘は、ちょっと二の句が継げなくなりました。

なるほど、そういわれてみれば、そこに疑いの余地がないではない。ドコといって非点の打ちようのない殿様が、その位地を去らねばならぬまでの事情を、聞いてもみなかったし、考えてもみなかったが、茂太郎から、かりそめに疑われて、はじめて疑いの心が起りました。