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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠10(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 頁
そんなことまで心配してみたが、きょうこのごろ、風のたよりに聞くと、白骨の温泉では、どうか大菩薩峠の著者にもぜひ来て泊ってもらいたい、ここには四軒、宿屋があるから、一軒に一晩ずつ泊っても四晩泊れる――と、何かしらの好意を伝えてくれとか、くれるなとか、ことわりがあったそうである。してみれば、ハッコツの呼び名が宣伝になって、宿屋商売の上にいくらかの利き目が眼前に現われたものとも思われる。しかし、宣伝と、提灯が、どう間違っても、白骨の温泉が別府となり、熱海となる気づかいはあるまい。まして日本アルプスの名もまだ生れてはいないし、主脈の高山峻嶺とても、伝説に似た二三の高僧連の遊錫のあとを記録にとどめているに過ぎないし、物を温むる湯場も、空が冷えれば、人は逃げるように里に下る時とところなのですから、ある夜のすさびに、北原賢次が筆を取って、
白狼河北音書絶(白狼河北、音書絶えたり)
丹鳳城南秋夜長(丹鳳城南、秋夜長し)
と壁に書きなぐった文字そのものが、如実に時の寂寥と、人の無聊とを、物語っているようであります。
その時、その温泉に冬越しをしようという人々――それはあのいやなおばさんと、その男妾の浅吉との横死を別としては、前巻以来に増しも減りもしない。