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だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠10(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 頁

青空文庫

「お気をつけなさいましよ、胡麻の蠅が一匹ついて参りましたようですから」

芳浜の茶屋あたりで、通りすがりに注意してくれた旅の人がありました。

それとも、自分たちに注意してくれたのだか、ほかの者に気をつけていったのかわからないうちに、その旅人は行き過ぎてしまいました。

道中に胡麻の蠅はつきものである。いちいち胡麻の蠅を怖れていては、道中はできない。またそれが一匹や二匹とまってみたからとて、驚くお角さんではありません。

真鶴を通り越した時分に、またしても後ろから呼びかける声です。そうそうは振返ってもおられない。頓着なしに駕籠をやってしまうと、果して何事もなく、七ツには小田原着。

今日はここで泊る。

夕飯を終って、按摩を取って、まだ寝るには早い。安閑と早寝をするのを、身体を腐らせるほどにいやがるお角さんは、寝るまでの間に何か仕事をしたい。

といって、仕事がない。ぶらぶらと夜の小田原宿の景色でも歩いて見ようか知ら――と考えているところへ、

「お客様、講釈をお聞きにいらっしゃいませんか――いい太夫さんがかかったそうです、席はついこの後ろでございますよ」

可愛らしい小女の女中が、突然にこういって案内をする。