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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠10(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 頁
そうしてみると、もうこの人生で、この男の行楽のやり場というものは一つもない。ところでこうして、手持無沙汰をきわめた閑居のやむなきにいると、お絹という女が、あれでなかなか干渉をする。
自分は御覧の通りの体たらくであるのに、主膳のこととなると、酒を飲むことから、外出することにまで干渉する。いっぱし、自分が監督者気取りで納まっているようにも見られる。臍が茶を沸かすことといえば、臍が茶を沸かすことに違いないが、それだけまた相当に親切気を見せ、いたわるのだから、今のところ、あの女の手一つに、主膳の家庭味というものが握られて、甚だしい酒乱にも至らず、甚だしい放埒もない。ともかくも、無意味きわまった閑居を、少しでも維持しておられるのだから、主膳としては、どうしてもあの女を放しきれないでいる。
さあ、今日あたりは例の足立のなまぐさ坊主でも、碁打ちに来ないかな――と気のついた時分、空中から、唸りを生じて、自分のながめている前庭の真直ぐ前に、轟然として舞い落ちたものがあります。
何だ――何の騒ぎだ。それは凧が落ちたのです。見れば、西の内二枚半ばかりの、巴御前を描いたまだ新しい絵凧が一枚、空中から舞い落ちて、糸は高く桜の梢に、凧は低く木蓮の枝にひっからまって、それを外そうと、垣の外でグイグイ引くのがわかります。