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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠10(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 頁
これは凧ではない。凧でないことは、主膳もとうに心得ていて、立ち上りながら、
「やあ」
と言いました。
「御免下さいまし」
と縁に手をついて挨拶したその人は、裏宿の七兵衛であります。
七兵衛のことだから、天から降ったか、地から湧いたか、屋根裏から落ちて来たか、井戸の底から安達藤三をきめこんで来たか、それがわからないところが、七兵衛の七兵衛たるゆえんかも知れない。
主膳も、その辺は、とうに心得ているから、凧のひっかかったほどに、興味も感ずることなく、
「まあ、上れ」
自分も再び腰を据えて、時にとっての相方に、多少の張合いを持つことができたようです。
例によって旅装いの七兵衛は、そこへ腰をかけたなりで、煙草を吹かしながら、話がこんなことに進んで行きました、
「ねえ、神尾の殿様、近いうちに、お江戸の町が飛んでもないことになりそうでございますよ」
「どんなに」
「つまり、お江戸の町という町が、焼き払われてしまうなんていうことにならないものでもなかろうと考えられますよ」
「ばかな」
「本当でございますよ」
「江戸中を焼き払うなんて大きな火事は、近頃あんまりはやらねえ――」
と主膳がうそぶいて、取合わない。