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だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠10(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 頁

青空文庫

そうかといって、眼は熊に向いつつも、心はよそに、二大政党の勢力が伯仲の間にあって、将来の政局がどう安定するか、というようなことをも考えている男ではありません。

一万円の自動車を飛ばし、金にあかして多数の犬を弄んだという金持の文士が、民衆を標榜して打って出でると、それに五千の投票が集まるという、甘辛せんべいみたような帝都の人気を、苦笑しているわけでもないのであります。

宇治山田の米友が、こうも一心に熊に打込んでみとれているというのは、この熊を見て、はしなくも、ムク犬のことを思い出したからであります。

米友は、熊を見ているうちに、ムクのことを思い出して、たまらなくなりました。

ムクはいい犬だったなあ――ムクは可愛ゆい奴だなあ――ムクは……

やや暫くした瞬間に、ハッと気がついて、例の責任感がこみ上げて来ると矢も楯も堪らず、土産物屋の熊胆をかっぱらうようにさらって、走り出しました。

そこで宇治山田の米友が、木曾の福島の町をまっしぐらに飛び出しました。

碓氷峠の時も、うっかり風車にもたれて東の国を顧望していた時に、道庵先生を見失い、ついに軽井沢の大活劇を演じて、辛うじて、道庵先生の命を九毛の危うきに救い出しました。