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だいぼさつとうげ

大菩薩峠11

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠11(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 頁

青空文庫

が入り来るのを如何ともすることができません。

お雪は、そのことで幻覚に陥っているうちに、つい、いい心持になりました。

いい心持になって、炬燵にいるうちに、なんとなく泣きたい気持になりました。

ここで思う存分泣いてみたいような気になっていると、隣室の幻覚のことも耳には入らず、他人の座敷を、わが物顔に、帰ることを忘れているのも気がつかず、なんとなしに、思う存分、甘い涙にひたって、泣けるだけ泣いてみたいような気分で、炬燵に頬をうずめてしまいました。

ですから、隣室の幻覚は、もうその時分に消え失せて、二人の高話も、ふっとやみ、その中に妙にからまった女の音もきれいに消えてしまい、今までの喧噪が、あるかなきかの世界に変ってしまったことも、とんと気がつかずに、夢のようにしていると、不意に背後に、衣摺れの音がしたかと思うと、早くも、自分の両の眼を、後ろから目かくしをしてしまったものがあります。

「あれ、まあ、どなたですか」

お雪は全く驚き呆れてしまいました。

今までこの宿中で、かなり誰にも親しくしていたが、その親しみというものは、おのずから限界というものがあって、未だかつて、こうまで無作法になれ親しまれたものはないはずです。