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だいぼさつとうげ
大菩薩峠11
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠11(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 頁
誰だろう――暗いところで、音のした方向を見ると、人が一人、すっと出て来て、向うの降り口を鍵の手に廻り、さっさと二階へ下りて行くのを認めます。しかも、その人が、女であることが、ハッキリと兵馬の夜目にうつりました。
女でありさえすれば、それはこの全宿中に一人しかあるべきはずはない。自分が今たずねてみようかしらと心がまえしているところのあの娘――
そこで兵馬は、ハテと胸をつかれました。
この暗いところから、あの娘はひとり、三階まで何しに来たのだろう。
下へおりて行くならば、どこへ行こうとも順だが、間違って上へのぼるはずはないのだ。それとも、三階へ座敷替えでもしたのか。
だが三階のどこにも火の気のありそうなところは見えない。火の気が無ければ、人の気が無いのだ。その火の気も無い座敷の一つを、あの娘がおとずれたもののようにしか思えないのが、おかしいではないか。
その不審は不審として置いて、兵馬は同じところから二階へ下り、案内知った東南の隅の間に近づいて見ると、ここは明りがしていますから、障子へ手をかけて、
「御免下さい」
とたずねてみたけれども、返事がありません。