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だいぼさつとうげ
大菩薩峠11
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠11(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 頁
「たのむ――」
と声も高くなり、たたく音も強くなりましたから、北原賢次が聞咎めて、
「誰だい」
といって、立とうとはしません。多分、山へ行った猟師が戻ったものだろう、とは思ったが、猟師ならば、頼むも、頼まないもあったものではない、大戸をあけて、ここへ入り込んで、両足を炉縁に踏込みながら、獲物の自慢話をはじめるのが例になっている。
「どなたもおられぬか――案内をたのみますぞや」
「はてな」
全く、この冬籠りの一座には、聞きなれぬところの声であるから、北原賢次が、ようやく身を起しかけました。
「おかしいな、全くふりのお客らしいが……出てみよう」
ともかくも、一番先にそれを耳にした人に、出て応対をしてみる責めがあると観念して、北原は立って、
「新助さんかね」
「旅の者でございます、少々尋ねる人があって、これへ入り込みました」
「何、たずねる人があって、いまごろ、今時分、ここまでおいでになった……」
「御免下さい」
北原賢次が土間へ下りて、ありあわせの草履を突っかけて、戸をあけにかかった時、ふと本能的に、自衛の念にかられないでもありません。
秋からかけて、冬籠りでさえ異例であるこのところへ、新たに入り込み来る人、しかも、まだ深くはないと言いながら、この雪、この夜、人を尋ねるといって来たその人の正体が、油断ならない。