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だいぼさつとうげ

大菩薩峠11

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠11(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 頁

青空文庫

あちら向きに坐って、極めて静かに深夜の針を動かす女性を見る。

この衣を走る針の音までが、さやさやと聞える。

丸髷に結って、よく似合う袷を着た、ほんとによい姿の女。

無惨なのは、肩から、背から、胸へかけてのあの血汐。

当人は、痛いとも、苦しいとも思ってはいないらしい。

針の動く音が、まことに静かだ。

兵馬は半身を起して、その後ろ姿をじっと見つめたけれども、女は振返らない。

落ちついていること。

「誰です」

兵馬が呼びかけた時、

「兵馬さん、お目ざめになって……」

はじめて、ふり返って、にっこりと笑ったのは、忘るるひまのない嫂のお浜でありました。

「嫂様ではありませんか」

「そうよ」

「今頃、何をしていらっしゃるのです」

「子供のために綿入を縫って上げようと思いましてね、追々寒くなりますからね」

「ははあ、そうでしたか」

兵馬は憮然としてしまいました。竜之助の前には幾度も現われるこの女、こうして兵馬の前に現われたのは今宵がはじめてか知らん。

お浜は、兵馬に対してこれだけの受答えをすると共に、また、あちら向きになって、一心に縫物を進めています。

「嫂さん、あなたは無事だったのですか」