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だいぼさつとうげ

大菩薩峠11

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠11(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 頁

青空文庫

そうして、どれも最近の墨の香がするから、この夏の末に去った人ではない、現にここにいる人のうちの筆のすさびに相違ない、とすればこの女の人は、さいぜん親切に自分を介抱してくれた娘さんだ、あの人に違いない。

宿の娘ではないし、誰か連れがあって冬籠りをする逗留の客に違いない。その連れはいずれも相当の教養もあり、風流も解する人だ。旅客で、悪客と隣するのと、好客と泊り合わせるのとは、非常な幸と不幸とであると、兵馬はそんな感じを受けながら見ると、女文字の和歌には、どれにも「雪」という名がしるしてあります。

六

同じ日の夕方、机竜之助は、炬燵を前にして、端然と腕組みをして首低れていました。

この時は、九曜の紋のついた黒の衣裳で、髪かたちも、さまで乱れてはいず、膝は炬燵の中へ入れないで、さながら、お行儀よくお膳に向った時のような姿勢で坐っています。

尺八は少し離れたところの机の上にあって、膝のわきには二本の刀が、これも瀞につながれた筏のようにおだやかに、一室の畳の上に游弋している。

このごろは、お雪も、久助も、あまりこの室へはおとずれないらしい。