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だいぼさつとうげ

大菩薩峠11

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠11(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 368,567 字 · 720 頁

青空文庫

しかし、兵馬が、こんな思案をして、用心して、引返そうとしているうちに、尺八の一曲も終ったと見えて、また、ひっそりした天地にかえったものですから、それならば、いっそ、ここをずっと突きぬけて、いま尺八の音のしたあたりの部屋の前をも通り過ぎて、廊下のはずれから二階へ下りて、自分の部屋へ帰った方がよかろうと思案を改めます。

つまり、尺八を吹き鳴らしている間こそ、人の清興をさまたげては悪いという遠慮気兼ねもあるが、それが済んでしまってさえみれば、さりげなき体で、尋常の通行人として、その通り去り、通り来る分には、何の憚るところもあるべきはずがない。

そのように思案を改めたものですから、兵馬はそれからは忍び足もせず、間毎間毎をうかがうような振舞もせず、尋常に足音を立てて廊下を歩んで、志す方へと行きましたが、不思議なことには、たしか、ただいまの尺八の音の起ったのは、この辺でなければならぬと思われるところあたりに、一向、燈火の影がないことです。

尺八の音がするのだから、音をさせる人がいるに相違ない。音をさせる人がいる以上は、その部屋があるに相違ない。夜分、部屋に坐って尺八でも吹こうという人が、燈火もつけないでいるはずはない。