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だいぼさつとうげ
大菩薩峠16
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠16(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 268,946 字 · 520 頁
通常、山へ向っては奥深く、水へ向っては殷賑を予想されるのでありますが、今はそれが裏切られて行くような筋道にも、弁信はさのみ失望しなかったと見えて、その草叢の中を進み進んで行きますうちに、ある巨大なる切石が置捨てられてあるところで足を止めました。
「モシ――」
と、そこでまた突然と、物に向って呼びかけたのですが、無論、誰もいないのです。見渡す限り、この荒園のようになっている木立の間から、湖面が渺として展開されているのを見るには見るが、そのあたりは全く人気のない荒涼たる湖岸の地となっているところで、弁信が足をとどめて聞き耳を立てて後、「モシ――」と言ったのは、前例によって見ると、何ぞ相当に人臭いものをかんづいた故にこそでしょう。しかし、手答えはありませんでした。
「モシ――少々物を承りたいのでございますが」
明眼の人の眼は外れても、弁信の勘の外れた例のないのを例とすることによって、こうして弁信から、「物を承りたい」と呼びかけられた当面には、何か相当のものが存在していなければならないはずなのです。
果して、有りました。有ってみると、かくべつ珍しいものではありませんでした。