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だいぼさつとうげ

大菩薩峠19

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠19(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 319,771 字 · 617 頁

青空文庫

獲物は、声も揚げない、叫びも立てない、死んだもののようになっている。死んでいるのかも知れない。大蛇は静かに蠕動して、そうして確かに生きている。

はっ! と、村正氏はついに雪洞を取落してしまいました。

四方はまたまっくらやみ。

二十九

その日、大びけ過ぎといった時刻の暁方、追い立てられるように、島原の大門を出た、たった一人の客がありました。

追い立てられるというのは、ホンの形容で、事実、誰も追う人はなし、追わるるような弱味の体勢にはなっていないが、時が時であって、四方が四方でしたから、引窓の中から抜け出して、朝霧の中へ消えて行くような感じで大門を出たが、足どりは寛やかで、時々町筋に留まっては、前後を思案するような気配がある。黒い頭巾をかぶって、着ていたのが合羽ではない、被布であるらしい。下着は白地で、大小を落し目に差しこんでいるが、伊達の落し差しではない。スワ! と言わないまでも、いつ何時でも鞘走るような体勢で、それでもって、はなはだ落着いて、静かに地上を漂うが如く忍んで行く。

ははあ、これだな、先刻、御簾の間の、闇にひとりぽっちの爛酔の客、しきりに囈語を吐いて後に、小兎一匹を虜にしてとぐろを巻いて蠕動していた客。