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だいぼさつとうげ
大菩薩峠19
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠19(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 319,771 字 · 617 頁
三十九
「モシ、こちらのお座敷へ玉が参りませんでしたか」
「あ」
と斎藤がふるえ上って、思わず手にした猫を振り放してしまった。
「おお、玉や、玉や、ここにいたかい」
入って来たものは、何とも言いようのないしなやかな美人でした。それが、寝まき姿のしどけない風をして、不意にこの場へ現われて呼びかけたのは、人でなくして獣でありました。
獣のうちの最も人に愛せらるる獣にして、且つ最も小なるもの、この獣を玉と言い、この美人の愛猫でありました。
愛は怖ろしいものです。婦人として、他人には見せてならない寝巻の姿のまんまで、そうして進んではならない他人の室へ、女として無断に入り込んだのも愛すればこそです。人を愛するのではない、猫を愛すればこそでありました。
「あ、ここに来とりました、お持ち帰り下さい」
血を見ては怖れない新撰組のつわものの一人で、さる者ありと知られたる斎藤一も、この深夜の美人の突然の来襲には、いたく肝を抜かれたと見えまして、さも自分が猫を盗み出してでも連れ来って、申しわけのないような口吻であやまるのが笑止千万。
「まあ、何という失礼ななりで、ごめん遊ばしませ、玉や」