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だいぼさつとうげ

大菩薩峠19

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠19(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 319,771 字 · 617 頁

青空文庫

よよと泣くのだから、黙泣でもなければ慟哭でもない、むしろ忍び音といった低い調子でしたけれども、ソプラノの音で、女の泣く声でした。

それには思わず立ちすくまざるを得なかったので、みるともなく、見上ぐるともなく、声のした方に面を向けると、あ、ああ――! というこれも泣く音。前に、よよと泣いたのはソプラノで、次に、あ、あ、あ! と泣いたのはバス。ただ、ソプラノは低くて、バスが高い。

よ、よ、あ、あ! よ、よ、あ、あ! テノールとなり、アルトとなって、完全な二部合奏がはじまったのは、ついその瞬間で、まさしく男女抱き合って泣いている声です。

竜之助は、それを忌々しい声だと思いました。人の出際にあたって、笑ってこれを送るというなら話になるが、泣いてこれを送り出すというは忌々しい。

それを癪にさわって、改めて、その泣く音の方を見廻し――やっぱり、眼は利かないし、光はないのですが、本能的に左様な身ぶりをして、ドコで誰が泣いていやがる――というこなしでありましたが、その男女の悲泣の合奏の、この部屋の一隅でしているのか、柱の中でしているのか、あるいは天井裏でしているのか、トンと見当がつきません。