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だいぼさつとうげ
大菩薩峠19
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠19(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 319,771 字 · 617 頁
竜之助は、その夜の明けないうちに、またここをさまよい出でて行方が知れません。
その夜が明けても、誰もこの座敷をおとなうものがありませんでした。いつもならば御陵隊士の片われだの、それを訪ねて来る浪客などで甚だ賑わうのですが、いつになっても人が来ないだけに、かえってすさまじいものがあるのです。
しかし、表向き隊の屯所の方面は、今暁、昨晩からかけてものすごい人の出入りで、ものすごい殺気が溢れ返っていると見えたが、それも、やがて、げっそりと落ち込んだように静かになってしまったから、今朝の月心院の庫裡の光景というものは、冷たいような、寒いような、生ぬるいような、咽せ返るような、名状すべからざる気分に溢れておりました。
そこへ、饅頭笠に赤合羽といういでたちで大小二人の者が、突然にやって来て、溜の前で合羽をとると、警板をカチカチと打つ。
「おう!」
と答えて中から出て来たのは、これより先、いつのまにか来着して一隅に寝ていた一人の壮士でありました。
そこで、右の三人が、例の獅噛火鉢の周囲に取りつくと、合羽を取った大小二人の者は、南条力と、五十嵐甲子雄でありました。