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だいぼさつとうげ

大菩薩峠19

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠19(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 319,771 字 · 617 頁

青空文庫

「で、走餅というのは、もうこの辺にございませんか」

「ええ、もう、代が変りやはりまして」

「そうですか、どうも有難う、お手数をかけました。犬の子が盛んに蕃殖をいたしつつありますな」

「はい」

「いったい、今はどなたの御所有に帰しているのですか、この御別荘と、それからこの井戸は」

「寒雪先生の御別荘になっていやはります」

「寒雪先生とおっしゃるのは、あの樫本寒雪先生のことですか」

「はい、左様でござります」

「そうでしたか、寒雪先生、東海道名代の名物を自分の垣根に取込んでしまうなどは心憎い。そうして先生は、時々これへおいでになりますかな」

「はい、月に一度ぐらいはお見えなさりやす」

「絵を描きにおいでになるのですか、ただ休養にだけいらっしゃるのですか」

不破の関守氏が、よけいなことまで口に出して聞いてみたのは、樫本寒雪といえば当時、聞えたる有名の画家であって、絵の方に於ても一代の名家だが、貨殖も相当なもので、なかなかに豪奢な生活を営んでいるということも聞き及んでいる。到るところに幾つもの別荘を構えていて、この別荘の如きは、ホンの小附の一つに過ぎまいと思われる。関守氏は走井のほかには、家の建前や庭のこしらえなどにはあまり心をひかれなかったものと見えて、そのまま辞して、早くも大谷風呂の前まで到着しました。