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だいぼさつとうげ

大菩薩峠19

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠19(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 319,771 字 · 617 頁

青空文庫

「エヘ、ヘ、送られ狼――こっちが気味が悪いんでございますよ」

かくて源松はまた、竜之助のあとを二三間ばかり離れて、薄尾花の中を歩みにかかる程合いのところで、またしても、

「あっ!」

と言ったのは、その、おどろおどろと茂る薄尾花の山科原の中から不意に猛然として風を切って現われたものがありました。

「あっ! 狼!」

轟の源松も立ちすくんでしまったのは、冗談ではない、送り狼の、送られ狼のと、口から出まかせに己れの名を濫用する白徒の目に物を見せようと、狼が飛び出して来た、正の狼が眼の前へ現われた!

と源松も一時は立ちすくんだが、そこは相当の度胸もあるから、

「あ! 狼ではない、鹿だ!」

鹿だ! と呼ばれた時は、その獣は、もはや源松の眼前をひらりと躍り越えて、行手へ二三丈突っ飛んだ時でありましたが、

「鹿ではない、やっぱり犬だ!」

と、源松が三たび訂正のやむを得ざるに立至ったものであります。

「犬にしちゃあ、すばらしくでけえ犬だなあ」

源松は追註をして、改めてそれの馳せ行く怪獣の後ろ影を呆然と見送ったばっかりです。

五十一

不意に出現の怪獣に、最初は狼と驚き、二度目には鹿と見直し、三度目には、やっぱり犬と訂正して、そうして更に、犬にしては豪勢素敵な奴だと追加の感歎を加えて、しばし呆然とその後ろ影を見送って立ち尽し