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だいぼさつとうげ
大菩薩峠19
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠19(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 319,771 字 · 617 頁
それはこの自叙伝が、雰囲気から言っても、どうらくから言っても、神尾の身に引きくらべて読むに最も都合よく出来ている――おれなんぞも、武術の方は、いい師匠を取って、相当に仕込まれたのだが、親爺がこんな馬鹿者でなかったためにしくじった。虎のような名剣師に就かなかったのが、まあ残念といえば残念のようなものだ。江戸者に生れて、身をあやまるも、身を立つるも、ほんの皮一重のものだよ――おれに子供でもあったらば……
神尾主膳も、こんなように娑婆っ気にまで誘発されて、しばらく三ツ眼を休めて考えている時、
「あなた、何を読んでらっしゃるの」
不意に隔ての襖をあけて、スラリとそこへ立っているのは、今日は姥桜に水の滴るような丸髷姿のお絹でありました。
七十一
襖越しに突立ったままで、嫣然として、
「あなた、何を読んでらっしゃるの」
ずいぶん、なめた行儀であるけれども、神尾にはそれがおこれない。ビタにしたように、無雑作にはこの女が扱えない。
「うむ、なに、その、ちっとばかり読んでいるところだよ」
何を読んでいるのかと、これ以上はお絹が突っこまない。何を読もうとこの女には、読書というものが、あまり頭にない。