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だいぼさつとうげ

大菩薩峠2

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠2(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,601 字 · 387 頁

青空文庫

「嘘ではない。峠から下りて来る時、山駕籠の中でうつつに聞いていたがよい声であった。あれをひとつ、この月の晩にここで聞かしてもらいたい」

「まあお恥かしいこと、あんなのは歌でもなんでもありゃしません、魔除にああして声を出し歩くだけのことで」

「そうではない、土地の歌は土地の人の口から聞かねば情合がない、あの、甲州出がけのという歌、あれを駕籠の中で聞いていた時に、わしはなんとなく腸に沁みるような心持がした、ぜひもう一度、聞かしてもらいたい」

「甲州出がけの吸附煙草、涙湿りで火がつかぬ……あれでございますか」

「そうそう、それにもう一つは何と言ったか、生れ故郷の……という歌」

「生れ故郷の氏神さんの、森が見えますほのぼのと……あれでございますか」

「それそれ、どうかあれをひとつ聞かしてもらいたい」

「ああいう時の調子では音頭取も致しますけれど、改まってどうしてお聞かせ申すことができますものか」

「そのように言わずにぜひ頼む……月があっても光が見えぬ、花があっても色の見えぬ身には、声と音を聞いて楽しむよりほかに道がない、どうぞその歌を聞かして拙者の心を慰めてもらいたい」