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だいぼさつとうげ

大菩薩峠3

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠3(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 214,131 字 · 423 頁

青空文庫

無事で逃げて帰ることのできたお絹は、実は能登守の一行について行きたかったのだけれども、身体が弱っているから、心ならずもここに留まることになりました。

かくて駒井能登守の一行が黒野田を出ると、幾カ所の橋を渡り、追分を通って、いよいよ笹子峠へかかりました。

「これが笹子峠の矢立の杉」

中の茶屋を通って、矢立の杉の下で一行が立ち止まってその杉を見上げました。

「ははあ、矢立の杉というのはこれか」

と言って杉のまわりをまわり歩いている連中が、面白半分に手を合せてその杉の大きさを抱えてみました。

「ちょうど七抱え半ある」

「昔の歌に、武夫の手向の征箭も跡ふりて神寂び立てる杉の一もと、とあるのはこの杉だ」

「ナニ、なんと言われる、その歌をもう一度」

と言って、写生帖を持っていたのが念を押しました。

「武夫の手向の征箭も跡ふりて神寂び立てる杉の一もと」

「なるほど」

写生帖へその歌を書き込んで、

「読人は」

「読人知らず」

「年代はいつごろ」

「これも知らぬ」

「ははあ、よく歌だけを記憶しておられた、感心なこと」

と言って写生帖が感心すると、古歌の通が笑って、

「ここの石に刻んであるからそれで知ったのだ」