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だいぼさつとうげ
大菩薩峠3
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠3(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 214,131 字 · 423 頁
「ちぇッ」
米友は舌打ちをしてその抛り出した金一封を尻目にかけながら、自分は手荷物と例の手槍と脚絆なんぞを掻き集めて、旅の仕度にとりかかります。
旅の仕度が出来上って、いざと米友は縁へ出ましたけれど、いま投げ出した金一封が、封のままでゴロリとそこに転がっているのが眼ざわりでたまりません。
米友の気象として、決してその金一封に未練があるのなんのというのではないけれど、ああして置いて誰にも見られないでほかの人に拾われてしまっては、結局やはり、自分が持って逃げたように思われてしまうのが心外であるから、松の根方に転がっている金一封を暫らくながめていましたが、そのうち、
「そうだ、そうだ、お暇乞いの印にあいつの座敷へこれを抛り込んでやれ」
何か思案がついたと見えて、庭へ飛び下りて、その金一封を拾い取るや米友は覘いを定めて、それをお絹の座敷へ障子越しに投げ込みました。
その時に、お絹の座敷にはお絹がいませんでした。お松がひとりで机によりかかって、本陣で貸してくれた本を読んでいました。
そこへ怖ろしい音がして、障子を突き破ってちょうど自分の読んでいた絵本の上へ、重い物が落ちて来たからお松は吃驚しました。