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だいぼさつとうげ
大菩薩峠7
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠7(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 242,044 字 · 477 頁
清澄の茂太郎は、その時分、寺の東南、宮の台なる三重の塔の九輪の上に遊んでおりました。
「弁信さあーん」
塔の上から三度、弁信の名を呼んだけれども返事がありません。そこで彼は、
「どうしたんだろう」
九輪を抱きながら、月光さわることなき地上を見下ろしました。いつもならば、呼ばない先に「茂ちゃんかい」――庭へ走り出して、見えない眼をこちらへ振向けて返事をするはず。そうすると茂太郎は、「ああ、わたしだよ、弁信さん、琵琶を持ってこっちへおいでよ」「茂ちゃん、お前どこにいるの」「三重の塔の天辺にいるんだよ、月がいいからおいでよ」「待っておいで」――そこで弁信が、いったん寺の中へ取って返して琵琶を持ち出して来るのだが、今宵はさっぱり返事がありませんから、
「どうしたんだろう」
九輪の上で茂太郎は、しきりに小首を傾けております。
どこへも出かけたはずはない、まだ眠ったとも思われない。打てば響くほどの返事がないのが、なんとなく気がかりで、茂太郎はまもなく、三重の塔を下へ降りて来ました。
下りて来たところも満地の月。月光、水の如くひたひたと流れているものですから、茂太郎の心が浮立って歩む足どりも躍るように、精いっぱいの声を張り上げて、宮原節を歌い出しました。