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おおさかのゆううつ
大阪の憂鬱
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《大阪の憂鬱(おおさかのゆううつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,647 字 · 14 頁
大の男が書くのである。いっそ蛍を飛ばすなら、祇園、先斗町の帰り、木屋町を流れる高瀬川の上を飛ぶ蛍火や、高台寺の樹の間を縫うて、流れ星のように、いや人魂のようにふっと光って、ふっと消え、スイスイと飛んで行く蛍火のあえかな青さを書いた方が、一匹五円の闇蛍より気が利いていよう。すくなくとも美しい。
それが京都の美しさだ。大阪の妾だった京都は、罹災してみすぼらしく、薄汚なくなった旦那の大阪と別れてしまうと、かえってますます美しく、はなやかになり、おまけに生き生きと若返った。古障子の破れ穴のように無気力だった京都は、新しく障子紙を貼り替えたのだ。かつての旦那だった大阪は、京都ではただで飛んでいる蛍をつかまえて、二匹五円で売っている。みじめというほかはない。
ところが、さすがに大阪だ。京都で一番賑かな四条通、河原町通の商店の資本は、敗戦後たいてい大阪商人から出ているという話である。
最近、四条河原町附近の土地を、五百万円の新円で買い取った大阪の商人がいるという。
焼けても、さすがに大阪だったのだ。――という眼でみれば、大阪の盛り場、闇市場を歩いている時と、京都のそれを歩いている時との感じの違いが、改めて判るのである。