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「ダブックウ」ひょうりゅうき
「太平洋漏水孔」漂流記
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《「太平洋漏水孔」漂流記(「ダブックウ」ひょうりゅうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 18,264 字 · 37 頁
竜宮から来た孤児
前作「天母峯」で活躍した折竹孫七の名を、読者諸君はお忘れではないと思う。
アメリカ自然科学博物館の名鳥獣採集者として、非番でも週金五百ドルはもらう至宝的存在だ。その彼が、稀獣矮麟を追い、麝牛をたずね、昼なおくらき大密林の海綿性湿土をふみ、あるいは酷寒水銀をくさらす極氷の高原をゆくうちに、知らず知らず踏破した秘境魔境のかずかず。その、わが折竹の大奇談の秘庫へ、いよいよこれから分け入ってゆくことになるのだ。
「おい、海を話せよ、君も、藻海ぐらいは往ったことがあるだろう」
とまず私は困らせてやれとばかりに、折竹にこう訊いたのである。
というのは、海に魔境ありということは未だに聴いてないからだ。絶海の孤島、といえばやはり土が要る。たいていは、大陸の中央か大峻険の奥。密林、氷河、毒瘴気の漂う魔の沼沢と――すべてが地上にあって海洋中にはない。ただ、あるといえば藻海くらいだろうが、それも過去における魔境に過ぎず……いまはその怪馬尾藻も汽船の推進器が切ってしまう。
大西洋を、メキシコ湾流がめぐるちょうどまっ唯中、北緯二十度から三十度辺にかけておそろしい藻の海がある。