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かのうせいのぶんがく

夫婦善哉

織田 作之助

線上閱讀織田 作之助《夫婦善哉(かのうせいのぶんがく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 47,834 字 · 94 頁

青空文庫

誌を持ち込んで、ジャン・ポール・サルトルの義眼めいた顔の近影を眺めている姿は、一体いかなる不逞なドラ猫に見えるであろうか。

ある大衆作家は「新婚ドライブ競争」というような題の小説を書くほどの神経の逞しさを持っていながら、座談会に出席すると、この頃の学生は朝に哲学書を読み、夕に低俗なる大衆小説を読んでいるのは、日本の文化のためになげかわしいというような口を利いて、小心翼々として文化の殉教者を気取るのである。一体どちらを読めというのか。いや、正倉院を見学しろと彼は返答するであろう。日本の芸術では結局美術だけが見るべきものであり、小説を美術品の如く観賞するという態度が生れるのも無理はない。奈良に住むと、小説が書けなくなるというのも、造型美術品から受ける何ともいいようのない単純な感動が、小説の筆を屈服させてしまうからであろう。だから、人間の可能性を描くというような努力をむなしいものと思い、小説形式の可能性を追究して、あくまで不純であることが純粋小説だという意味の純粋小説を作るのは、低級な芸術活動だと思い、作者自身の身辺や心境を即かず離れずに過不足なく描写することによって、小説を美術品の如く作ろうとし、美術品の如く観賞されることを、最高の目的とするのだ。