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めおとぜんざい
夫婦善哉
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《夫婦善哉(めおとぜんざい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 30,643 字 · 61 頁
に詣って蝋燭など思い切った寄進をした。その代り、寝覚めの悪い気持がしたので、戒名を聞いたりして棚に祭った。先妻の位牌が頭の上にあるのを見て、柳吉は何となく変な気がしたが、出しゃ張るなとも言わなかった。言えば何かと話がもつれて面倒だとさすがに利口な柳吉は、位牌さえ蝶子の前では拝まなかった。蝶子は毎朝花をかえたりして、一分の隙もなく振舞った。
二年経つと、貯金が三百円を少し超えた。蝶子は芸者時代のことを思い出し、あれはもう全部払うてくれたんかと種吉に訊くと、「さいな、もう安心しーや、この通りや」と証文出して来て見せた。母親のお辰はセルロイド人形の内職をし、弟の信一は夕刊売りをしていたことは蝶子も知っていたが、それにしてもどうして工面して払ったのかと、瞼が熱くなった。それで、はじめて弟に五十銭、お辰に三円、種吉に五円、それぞれくれてやる気が出た。そこで貯金はちょうど三百円になった。そのうち、柳吉が芸者遊びに百円ほど使ったので、二百円に減った。蝶子は泣けもしなかった。夕方電灯もつけぬ暗い六畳の間の真中にぺたりと坐り込み、腕ぐみして肩で息をしながら、障子紙の破れたところをじっと睨んでいた。