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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《奇談クラブ〔戦後版〕(きだんクラブ〔せんごばん〕)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,545 字 · 23 頁

青空文庫

うっかり世上の人に漏らすと、武士ともあろうものが、何んという腑抜けの沙汰と嘲られるのが関の山で――」

「――――」

「これが世間並の者なら、吉原を始め四宿の遊び女を買いあさり、悶々を慰めるという術もあろうが、何んの因果か、拙者はその気になれない。遊女に戯れて安価な慰めなどを得る気の重いのは、恐らく御貴殿も御同様であろう」

「御尤も」

それには妻木右太之進もすっかり共鳴しました。その頃の人の道徳に従って、遊女に戯れて憂さ晴しをやるような、そんな生優しい悩みでは無いと二人共信じ切って居たのです。

「ところで、御貴殿は、この先何うなさる御積りじゃ」

秋月九十郎は少し開き直りました。

「一向拙者には思案も御座らぬが――打開けて申すと、寝ては夢、さめては現と申し度いが、あの方を夢にさえ見られぬ苦しさを、唯悶々として過して居る有様で御座るよ」

「それはまた」

秋月九十郎は相手の腑甲斐なさに呆れた様子です。

「で、貴殿は?」

「拙者は散々考え抜いた末、一念発起して、お綾殿を見返してやろうと思いさだめたが――」

「お綾殿を見返す?」

「拙者はまだ二十五歳、気力にも腕にも智慧にも、人に引けは取らぬ自惚が御座る。