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きだんクラブ〔せんごばん〕

奇談クラブ〔戦後版〕

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《奇談クラブ〔戦後版〕(きだんクラブ〔せんごばん〕)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,531 字 · 23 頁

青空文庫

三

三

この謎の婦人記者矢留瀬苗子は、ある夜フト、京極三太郎の夢の中に現れたのでした。

それは非常に鮮明な組織立った夢で、どんな細かい部分までも、漏らすことなく記憶して居りましたが、不思議なことにその夢の中の生活には、全く色というのを欠いて居るのでした。勿論概念的には色の思想があったに違いありませんが、夢の中では殆んど絶対に色に対する感覚が無かったのです。

学者の説によれば、夢には色のないのが原則だといわれて居ります。夢に色があれば、それは病気か狂気の前徴だといわれ、現に病気で高熱などのある場合は、赤い巨大なものの圧迫を感ずることがありますが、それといっても極めて概念的な赤で、太陽の光線を分析して作り得るプリズムの純粋な赤とは、その感じ方でも大分違いがあります。

京極三太郎の見た夢の世界も、感覚的には殆んど色が無く、それは殆んど白と黒との濃淡に依って描き出された、スクリーンの上の世界に似て居りました。併しスクリーンの世界と違うところは物象に立体感と、触感があったことで、これを若し第四次元の世界の姿とすれば、其処は強烈な感覚的な世界であったにしても、白と黒の外には、殆んど色の無いのが特色であったといえるでしょう。