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おんなごころのつよければ
女心の強ければ
豊島 与志雄
線上閱讀豊島 与志雄《女心の強ければ(おんなごころのつよければ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 47,011 字 · 94 頁
と同時に、千代乃との関係も多少は打ち明けなければなるまいと、覚悟をきめた。
その覚悟が一挙に鍛え上げられるような、事件が起った。
夕刊新聞を見ているうち、長谷川は飛び上るほど駭然とした。
片隅の小さな記事に、怪死事件としての報道がのっていた。――昨日の夕刻、水道橋の国鉄電車のホームから軌道に落ちて轢死した紳士があった。名刺によって柿沼製菓会社の社長柿沼治郎氏と分った。過失死か自殺か他殺か判明しない。それについては何等の手掛りもなく、謎の死と見られている。
そういう意味の小記事で、どの夕刊も大同小異だし、全然掲載していないのもあった。
長谷川は異様な衝撃を受け、次で、異様な冷静さに落着いた。
彼はある新聞社の社会部記者に知人があった。その男に逢って、該記事を示し、真相が分ったら知らせてくれと頼んだ。
「あなたの知人ですか。」
「ええ、ちょっと知ってる人なんで……。」
新聞記者の好奇心というものは、ある面では極度に強く、ある面では極度に淡い。長谷川は何の疑念も持たれなかった。
然し、彼自身、疑念を懐いた。柿沼の死が他殺で、自分がその共犯人だとの、想像上の奇怪な疑念だった。