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ようば

妖婆

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《妖婆(ようば)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 37,473 字 · 73 頁

青空文庫

」と、二人の方を振り返りました。そこで皆一つ傘の下に雨をよけながら、積み上げた石と石との間をぬけて、ふだんは石切りが仕事をする所なのでしょう。石河岸の隅に張ってある蓆屋根の下へはいりました。その時は雨も益々凄じくなって、竪川を隔てた向う河岸も見えないほど、まっ白にたぎり落ちていましたから、この一枚の蓆屋根くらいでは、到底洩らずにすむ訣もありません。のみならず、霧のような雨のしぶきも、湿った土のと一しょに、濛々と外から吹きこんで来ます。そこで三人は蓆屋根の下にはいりながらも、まだ一本の蛇の目を頼みにして、削りかけたままになっている門柱らしい御影の上に、目白押しに腰を下しました。と、すぐに口を切ったのは新蔵です。「お敏、僕はもうお前に逢えないかと思っていた。」――こう云う内にまた雨の中を斜に蒼白い電光が走って、雲を裂くように雷が鳴りましたから、お敏は思わず銀杏返しを膝の上へ伏せて、しばらくはじっと身動きもしませんでしたが、やがて全く色を失った顔を挙げると、夢現のような目なざしをうっとりと外の雨脚へやって、「私ももう覚悟はして居りました。」と気味の悪いほど静に云いました。