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ようじゅつ
妖術
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《妖術(ようじゅつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,293 字 · 21 頁
四
門の下で、後を振返って見た時は、何店へか寄ったか、傍へ外れたか。仲見世の人通りは雨の朧に、ちらほらとより無かったのに、女の姿は見えなかった。
それきり逢わぬ、とは心の裡に思わないながら、一帆は急に寂しくなった。
妙に心も更まって、しばらく何事も忘れて、御堂の階段を……あの大提灯の下を小さく上って、厳かな廂を……欄干に添って、廻廊を左へ、角の擬宝珠で留まって、何やら吻と一息ついて、零するまでもないが、しっとりとする帽子を脱いで、額を手布で、ぐい、と拭った。
「素面だからな。」
と歎息するように独言して、扱いて片頬を撫でた手をそのまま、欄干に肱をついて、遍く境内をずらりと視めた。
早いもので、もう番傘の懐手、高足駄で悠々と歩行くのがある。……そうかと思うと、今になって一目散に駆出すのがある。心は種々な処へ、これから奥は、御堂の背後、世間の裏へ入る場所なれば、何の卑怯な、相合傘に後れは取らぬ、と肩の聳ゆるまで一人で気競うと、雨も霞んで、ヒヤヒヤと頬に触る。一雫も酔覚の水らしく、ぞくぞくと快く胸が時めく……
が、見透しのどこへも、女の姿は近づかぬ。