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あんごしたん

安吾史譚

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《安吾史譚(あんごしたん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,002 字 · 27 頁

青空文庫

またメンドウなことを云って、シブシブ持って来させた。

能勢の山へのぼり茶屋でカゴから降り、ここより二十五丁の山径を歩いて頂上へ登る。それから裸になって水行をとって妙見さまへ静々と参拝する。御紋服をきているから、他の参拝人は逃げだしてしまった、門の外の茶店でゆっくり休息する。

なかなか雨雲が現れないな。しかし、どうやら現れた。現れなかったら、彼はどうするつもりだったろう。その時はその時の何かの策はあったろうが、とにかく、こういうところは賭というものだ。賭がはずれれば、おのずから天来の打開策にたよるだけだし、すべてこれらの成行きは、偶然のサイコロがどう出ようと、実は彼の腹の底にできている覚悟が支配するものであろう。

六甲山から雨雲が現れてきたから、夢酔は合羽持に向って、

「お前は仕合せ者だな。今に雨が降るから、荷が軽くなるぞ」

「いいえ、たとえ雲がでても雨にはなりません」

百姓一同が異口同音に云う。夢酔はトンチャクなく、

「下のハタゴへ着くまではこの雨を降らせたくないものだな。それ、みなのもの急げ」

と、渋る奴どもムリに急がせる。二十五丁の降り道を急いで、あと三丁という時に本当に大雨が降ってきてドシャ降りになった。