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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
線上閱讀佐藤 垢石《完本 たぬき汁(たぬきじる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 133,158 字 · 273 頁
大長という男は四升余りを飲み尽くして近所に寝ていたが、次の朝、辰の刻ごろに眼をさまして再び中屋六右衛門の隠家へやってきて、きのう会った人々に一礼をなし、そこでまた一升五合飲んで家へ帰ったという。
六
日本の酒合戦は、遠い昔から行なわれている。いまから一千余年前、醍醐天皇の延喜十一年六月十五日、折りから盛夏の候であった。太上法皇は水閣を開いて、当時天下に聞こえた酒豪を招いて醇酒を賜わったのである。けだし禅観の暇、法慮の余、避暑の情をやり、選閑の趣を助けたというから、随分風流に寛いだ催しであったに違いない。
けれど、ご招きに応じた者は甚だ少なかった。参議藤原仲平、兵部大輔源嗣敬、右近衛少将藤原兼茂、藤原俊蔭、出羽守藤原経邦、兵部少輔良峰、遠視左兵衛佐藤原伊衡、平希也など僅かに八人であったのである。何れも当時無双の大上戸で、四海でその名を知らぬ者とてなかった。酒を飲んで石に及ぶと雖も、水をもって沙を濯ぐが如き者であったというのであるから、浴びるほど飲んでいたのであろう。
一同顔が揃うと宴席に勅令が降った。大杯の内側に墨で線を描き、増さず減ぜず深浅平均。