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たぬきじる

完本 たぬき汁

佐藤 垢石

線上閱讀佐藤 垢石《完本 たぬき汁(たぬきじる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 133,158 字 · 273 頁

青空文庫

しばらく、二人は無言でいたが、やがて亀右衛門が静かに言うよう、

『拙者、ただ今申したことは、皆偽りである、けれど、遠からず大阪に合戦が起こるであろうことは、誰が眼にも見えているところだ。その時、今日の後悔がないように、拙者ただ今偽りを申した。いまから奢りをやめ倹を専らにして、いつ合戦が起こるとも差し支えなきよう、軍用金を蓄え置くことこそ、武士のたしなみに候』

『かたじけなし――』

蔵人の眼から、暑い涙がふり落ちた。

『これまで、貴殿の諫めを用いなかったは、わが生涯の誤りであった。いまから、諫めをきっと守るであろう』

と、言って馬上に低頭したのである。

蔵人が、亀右衛門の信義に発奮してから三年目に、果たして大阪に乱が起こった。そのとき、蔵人は六千石の家格に恥ずかしからぬ軍役を全うしたと言う――(一四・一・七)