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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
線上閱讀佐藤 垢石《完本 たぬき汁(たぬきじる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 133,158 字 · 273 頁
斉正は、たかが七面鳥のことで、将軍と争うほどのこともあるまい、と急に考え直した。
『はははは……いやそれは、わたしの家内が飼っていますので――』
『そうか、叔母のものなら余のものと同じようなものじゃ。直ぐ持って参れ』
とうとう盛姫は甥の家定に、鐘愛措くところを知らない七面鳥をまきあげられてしまった。
二
鵞鳥は、何の表情も持たないが、七面鳥の喜怒哀楽には、甚だ変化があって面白い、と感じたらしい。けれど自分の観賞に誰も共鳴してくれる者がなかったので、まことに不満でいたところ、ある日奥医師が六人打ち揃って、拝診に伺候した。
当時、将軍家の奥医師というのは三十人常置となっていて、毎日六人宛交代して伺候することになっていたのである。家定は、いい相手がきたと考えた。例のとおり、脈の伺いが済んだ後で、将軍は医師たちに、
『その方どもは、七面鳥という南蛮わたりの珍鳥をまだ見たことはあるまい』
『は!――』
『見たいと申すか』
『冥加至極に存じます』
家定は、得意になった。直ぐ、掛かりの御小納戸に命じて、七面鳥を庭前へ誘い出させた。ところで、医師共は揃って庭へ降り立ち、