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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
線上閱讀佐藤 垢石《完本 たぬき汁(たぬきじる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 133,158 字 · 273 頁
四
友人に誘われて、一度吉原の情緒を覚えてから、私の心は飴のように蕩けた。
しまいには、小塚っ原で流連するようになった。朝、廓を出て千住の大橋のたもとから、一銭蒸気に乗って吾妻橋へ出るのが、私の慣わしであった。蒸気船が隅田川と綾瀬川の合流点を下流の方へ曲がる時、左舷から眺めると、鐘ヶ淵の波の上に『みやこ鳥』が浮いていた。楽しそうに水面に群れていたみやこ鳥は、行く蒸気船に驚いて二つの翅で水を搏った。そして、乗客の眼の上高く舞いめぐる白い腹の下を、薄くれないの二つの脚が紋様に彩って、美しかった。
船は今戸の寮の前を通った。間もなく、船が花川戸へ着くと、私はそこから、仲見世の東裏の大黒屋の縄暖簾をくぐり、泥鰌の熱い味噌汁で燗を一本つけさせた。
その頃、堀が隅田川へ注ぐ今戸の前にも、数多いみやこ鳥が群れていた。今戸にはいくつもの寮が邸をならべていて、みやこ鳥の浮かぶ雪景色に酒を酌んだのであった。今戸の寮は幕末から明治初期までが一番全盛を極めたのであって、この頃の物持ちや政治家が熱海や箱根へ別荘を設けるように、当時銀座の役人や御用商人、芸人、大名、囲われ者などがここへ別荘を作った。