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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
線上閱讀佐藤 垢石《完本 たぬき汁(たぬきじる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 133,158 字 · 273 頁
ほんとうに、これで参ったというほど頂戴してみたい。などと、さもしい夢をみることもある。
私の父も、随分酒が好きであった。毎日、朝から酔っ払っていたのである。しかし、おとなしい酒で、酔ってもにこにこしているが、一年中朝からにこにこされているのには家族の者も閉口した。私の子供のころ、近所の醸造元から毎夕二升入りの兵庫樽を配達してきた。それで金三十銭。つまり、一升十五銭という勘定である。こんな安い大乗の茶を飲んで、朝から瓶盞の仁となっていられた父は幸福であった。
いま時、一升十五銭などという安い酒は思いもよらない。酒楼に上がれば、一合三、四勺入りの徳利を二合入りと称して、一本七十銭から八十銭と勘定書についてくる。酔い潰れるほど、飲めなくなった所以であろう。
二
二升入りの兵庫樽一本三十銭は、明治中世の話であるが、維新前は我々に想像もつかぬほど安かったものだ。
奈良般若寺の古牒によると、慶長七年三月十三日の買い入れで、厨事以下行米三石六斗の代価七貫百三十二文、上酒一斗二百十八文、下酒二斗三升で二百十七文とあるが、当時の貸幣価値は当時使用したものでなければ分からないから、慶長頃の酒がどんなに安かったものか判断がつかない。