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いえ

家

島崎 藤村

線上閱讀島崎 藤村《家(いえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 126,748 字 · 254 頁

青空文庫

この祭には、近在の若い男女は言うに及ばず、遠い村々の旦那衆まで集って、町は人で埋められるのが例で、その熱狂した群集の気勢ばかりでも、静止していられないような思をさせる。こういう時にも、お種は家を守るものと定めて、それを自分の務めのように心得ていた。

実家の父――小泉忠寛の名は、時につけ事に触れ、お種の胸に浮んだ。お種や三吉の生れた小泉の家は、橋本の家とは十里ほど離れて、丁度この谿谷の尽きようとするところに在った。その家でお種は娘の時代を送った。父の忠寛は体格の大きな、足袋も図無しを穿いた程の人で、よく肩が凝ると言っては、庭先に牡丹の植えてある書院へ呼ばれて、そこでお種が叩かせられたもので、その間に父の教えたこと、話したことは、お種に取って長く忘れられないものと成った。そればかりではない、父は娘が手習の手本にまで、貞操の美しいことや、献身の女の徳であることや、隣の人までも愛せよということや、それから勤勉、克己、倹約、誠実、篤行などの訓誨を書いて、それをお種に習わせたものであった。

こういう阿爺を持って嫁いて来た人の腹に正太が出来た。お種は又、夫の達雄が心配するとは別の方で、自分の子が自分の自由にも成らないことを可嘆しく思った。