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かんざくらのはなし

寒桜の話

牧野 富太郎

線上閱讀牧野 富太郎《寒桜の話(かんざくらのはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,728 字 · 8 頁

青空文庫

そこで熱海でしかるべき地を相して、寒桜を各方へ分散して植えずにこれを一区域へ列植して一群の林を作る。それから一方の緋寒桜も同様これを方々へ分植せずに、これも一群の林となるように列植する。そしてなるべくはこの二桜林を左右か上下かに接近させる。

まもなくそれが生長し花を開くようになると一方は白いサクラ、一方は赤いサクラと咲き分けになり、それが二月頃同時に開くから熱海では赤白咲き分けのサクラがはや咲いているとて大評判となり、この機逸すべからずと同地の宿屋連中が馬力をかけて大いに広告すれば、そら行って花見をせよやとお客がわれ劣らじと四方八方からワンサワンサと押しかけ来たり、宿屋はたちまちみな満員、桜の林には人だかり、とても同地は賑わうことであろうと信ずる。

こんな天然物を利用して繁栄を策することは、永久的のものであって一時的なものでなく策の最も上乗なものである。私は熱海人士に熱海人士が大いに私のこの献策に耳を傾けられんことを願いたいとは、ずっと以前から私の熱海をおもう老婆心であったのである。

ところがさすが同地にもやはり具眼の人々があって近来寒桜の苗木を多数用意しだいぶこれを同地に植えたのである。