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かんえいぶどうかがみ

寛永武道鑑

直木 三十五

線上閱讀直木 三十五《寛永武道鑑(かんえいぶどうかがみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,633 字 · 26 頁

青空文庫

そんな物が、そんな物が)

里恵は、兄の又五郎が、好もしい男なら、自分から、夫に、助太刀をしてやって下さいと、云えたが、それさえ云いたくない兄への反感。それに、その妹への義理立てをしなくてはならぬという世間――。

(何という、訳の判らない世間であろう)

里恵は、そう考えていたが――だが、武士の娘であった。いや、半兵衛の女房であった。彼女は、家中に対する夫の面目の為に、いつでも、発足できるよう、新らしい旅仕度を調えながら――だが、泣いていた。

四

「里恵」

そう云った夫の眼、夫の口調、それから、その正しい坐り方に、里恵は

(今日は?)

と、そう思っただけで、もう胸の中が、固くなってしまった。

「又五郎殿の、助太刀に出る」

里恵は、俯いた。

「兼々、家中の噂を存じておろう。然し、わしは、噂によって、噂に押されて、嫌々ながら、助太刀に出るのでは無い。形は、助太刀であるが、心は、荒木又右衛門なる者と一手合したいからじゃ。お前にだけは、打明けておくが、荒木も、郡山で二百石、わしも二百石。その荒木が、今度存じておろう、将軍家の御前試合に出た。同じ二百石であり乍ら、将軍家の前へ出られるのと、出られぬのと、どんな違いがあるか? それを天下に示したい。