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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第一巻(どんぐり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 頁
弁明しうるまで安眠しない事もあった。またたとえばある日たずねて来た二人が自分たちの近ごろかかった病気の話をしているうちに、その一人が感冒で一週間ばかり休んで寝ていたが、実に「いい気持ち」であったと言って、二人で顔を見合わせて意味ありげに笑った。そのような事でさえ彼の血管へ一滴の毒液を注射するくらいな効果があった。二人が帰って後にぼんやり机の前にすわったきりで、その事ばかり考えていた。そういう時には彼の口中はすっかりかわき上がって、手の指がふるえていた。そうして目立って食欲が減退するのであった。彼自身にも、それが病的であるという事を自覚しないではなかったが、その自覚はこのような発作を止めるにはなんの役にも立たなかった。そんな時に適当な書物を読めばいいことも知っていたが、発作のはげしい時には書物をあけて読もうと思って努力しても、心はすぐ書物を離れて、もとの暗やみへずり落ちて行った。むしろその暗やみへ向かって飛び込んで行くと、ある時間の後にはどこからか明かりがさして来て夜の明けるようになるのであった。
同じように人から来る手紙の中の言葉などにもかなりに敏感になっていた。