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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第一巻(どんぐり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 頁
土蔵の横にある大きな柿の木の大枝小枝がまっさおな南国の空いっぱいに広がっている。すぐ裏の冬田一面には黄金色の日光がみなぎりわたっている。そうかと思うと、村はずれのうすら寒い竹やぶの曲がり角を鳥刺し竿をもった子供が二三人そろそろ歩いて行く。こんな幻像を夢うつつの界に繰り返しながらいつのまにかウトウト眠ってしまう。看護婦がそろそろ起き出して室内を掃除する騒がしい音などは全く気にならないで、いい気持ちに寝ついてしまうのである。
このような朝をいくつとなく繰り返した。しかし朝の五時ごろにいつでも遠い廊下のかなたで聞こえる不思議な音ははたして人の足音や扉の音であるか、それとも蒸気が遠いボイラーからだんだんに寄せて来る時の雑音であるか、とうとう確かめる事ができないで退院してしまった。今でもあの音を思い出すとなんとなく一種の――神秘的というのはあまり大げさかもしれぬが、しかしやはり一種の神秘的な感じがする。なぜそんな気がするのかわからない。遠い所から来る音波が廊下の壁や床や天井からなんべんとなく反射される間に波の形を変えて、元来は平凡な音があらゆる現実の手近な音とはちがった音色に変化し、そのためにあのような不可思議な感じを起こさせるのか、あるいは熱い蒸気が外気の寒冷と戦いながら、徐々にしかし確実に鉄管を伝わって近寄っ