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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第一巻(どんぐり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 頁
こんな感じのする人はほかには少ないかもしれない。しかしよく考えてみると、自分は自分の手近な「義務」とあまり直接の関係のないあらゆる享楽を味わう時には、たとえその事自身が卑近な感覚的なものでなくてもなんだか一種の不安を感じる場合が多い。いつか田舎から出て来た親戚の老婦人を帝劇へ案内して菊五郎と三津五郎の舞踊を見せた時に、その婦人が「あまりおもしろくて、見ているうちに、私はこんなにおもしろくてもいいのかしらんと思って、なんだかそら恐ろしくなりました」と言った。この婦人はずいぶん人生の不幸をなめ尽くしたような人であったから、特にそう思われたのかもしれない。しかしこの一例から考えても、同じような経験は存外多くの人に共通なものかもしれない。ウィリアム・ジェームスの心理学の中に「音楽の享楽にふける事でさえも、その人が自分で演奏者であるか、あるいはその音楽を純理知的に受け入れるほどに音楽的の天賦を有するのでなければ、その人の人格をゆるめ弱めるという結果を生ずるだろう。……この弊を矯めるには演奏会で受けた感動を、その後に何か主動的な方法で表現しないではおかないという習慣をつければいい。