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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第一巻(どんぐり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 頁
などと言った。実際そばには見た事もないような大きな犬がちゃんと番をしているのであった。
それから二十何年の間に自分はかなり多くの油絵に目をさらした。数からいえばおそらく莫大なものであろう。見ているうちに自分の目はだんだんにいろいろに変わって来た。そして芸術としての油絵というものに対する考えもいろいろにうつって行った。ただその間に不断にいだいていた希望はいつか一度は「自分のかいた絵」を見たいという事であった。世界じゅうに名画の数がどれほどあってもそれはかまわない。どんなに拙劣でもいいから、生まれてまだ見た事のない自分の油絵というものに対してみたいというのであった。
このような望みは起こっては消え起こっては消え十数年も続いて来た。それがことしの草木の芽立つと同時に強い力で復活した。そしてその望みを満足させる事が、同時に病余の今の仕事として適当であるという事に気がついた。
それでさっそく絵の具や筆や必要品を取りそろえて小さなスケッチ板へ生まれて始めてのダップレナチュールを試みる事になった。新しいパレットに押し出した絵の具のなまなましい光とにおいは強烈に昔の記憶を呼び起こさせた。