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どんぐり

寺田寅彦随筆集 第一巻

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第一巻(どんぐり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 頁

青空文庫

それだから、どの絵にもどの絵にも同じ四つ目垣のどこかの部分が顔を出していたり、同し屋根がどこかに出っ張ったりしている事になるのは免れ難い。

それでも私にとってはやはりおもしろくない事はなかった。たとえば四つ目垣でも屋根でも芙蓉でも鶏頭でも、いまだかつてこれでやや満足だと思うようにかけた事は一度もないのだから、いくらかいてもそれはいつでも新しく、いつでもちがった垣根や草木である。おそらく一生かいていてもこれらの「物」に飽きるような事はあるまいと思う。かく事には時々飽きはしても。

展覧会などで本職の画家のかいた絵を見ると、美しい草木や景色や建築物やが惜しげもなく材料に使われている。今の自分から見るとこれらの画家は実にうらやましい有福な身分だと思う。世の中に何がぜいたくだと言って、このような美しく貴重な自然を勝手自在にわが物同様に使用し時には濫費してもいいという、これほどのぜいたくは少ないと思う。これに匹敵するぜいたくはおそらくただ読書ぐらいのものかもしれない。

そんな絵を見るたびに、きっと自分も門から外へ出てかいてみたくなるのである。一歩門を出さえすれば、ついそこの路地にでも川岸にでも電車停留場にでも、とにかくうちの庭とは比較にならないほどいい題材が、もったいないように無雑作に、顧みられずにころがっている。