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からすうりのはなとが
寺田寅彦随筆集 第三巻
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第三巻(からすうりのはなとが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 頁
それが最近に不思議な因縁からある日の東京劇場におけるその演技を臍の緒切って始めて見物するような回り合わせになった。それで、この場合における自分と、前記の亀さんや試写会の子供とちがうのはただ四十余年の年齢の相違だけである。従ってこの年取った子供のこの一夕の観覧の第一印象の記録は文楽通の読者にとってやはりそれだけの興味があるかもしれない。
入場したときは三勝半七酒屋の段が進行していた。
人形そのものの形態は、すでにたびたび実物を展覧会などで見たりあるいは写真で見たりして一通りは知っていたのであるが、人形芝居の舞台装置のことについては全く何事も知らなかったので、まず何よりもその点が自分の好奇的な注意をひいた。まず鴨居からつるした障子や木戸の模型がおもしろかった。次におもしろいと思ったのは、舞台面の仮想的の床がずっと高くなり、天井がずっと低くなって天地が圧縮され、従って縮小された道具とその前に動く人形との尺度の比例がちょうど適当な比例になっているために、人形のほうが現実性を帯びるとともに人形使いのほうがかえって非現実的になってくるということである。そのため人形のほうが人間になり、人間のほうが道具になっているのである。