輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
からすうりのはなとが
寺田寅彦随筆集 第三巻
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第三巻(からすうりのはなとが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 頁
田丸先生の追憶
なくなってまもない人の追憶を書くのはいろいろの意味で困難なものである。第一には、時のパースペクティヴとでもいうのか、近いほうの事がらの印象が遠い以前のそれを掩散したがる傾向がある。第二には、近いほうの事を書こうとすると自然現在の環境の中でのいろいろの当たりさわりが生じやすい。第三には、いったいそういうものを書こうというような気持ちにもなりにくいものである、いかにも心ないわざだという気がするのである。それで田丸先生の場合にしても、なくなられてまもない今日、こんなものを書く気になりかねるのではあるが、理学部会編集委員のたっての勧誘によって、ほんの少しばかり自分の高等学校時代の思い出を主にして書いてみることにした。
明治二十九年の秋熊本高等学校に入学してすぐに教わった三角術の先生がすなわち当時の若い田丸先生であった。トドハンターの本を教科書として使っていた。いちばん最初に試験をしたときの問題が、別にむつかしいはずはなかったのであるが、中学校の三角の問題のような、公式へはめればすぐできる種類のものでなくて、「吟味」といったような少しねつい種類の問題であったので、みんなすっかり面食らって、きれいに失敗してしまって、ほとんどだれも満足にできたものはなかった。