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つきとあざらし
小川未明童話集
小川 未明
線上閱讀小川 未明《小川未明童話集(つきとあざらし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 9,033 字 · 20 頁
月夜とめがね
町も、野も、いたるところ、緑の葉につつまれているころでありました。
おだやかな、月のいい晩のことであります。しずかな町のはずれにおばあさんは住んでいましたが、おばあさんは、ただひとり、窓の下にすわって、針しごとをしていました。
ランプの火が、あたりを平和に照らしていました。おばあさんは、もういい年でありましたから、目がかすんで、針のめどによく糸が通らないので、ランプの火に、いくたびも、すかしてながめたり、また、しわのよった指さきで、ほそい糸をよったりしていました。
月の光は、うす青く、この世界を照らしていました。なまあたたかな水の中に、木立も、家も、丘も、みんなひたされたようであります。おばあさんは、こうしてしごとをしながら、自分のわかいじぶんのことや、また、遠方のしんせきのことや、はなれてくらしている孫娘のことなどを、空想していたのであります。
目ざまし時計の音が、カタ、コト、カタ、コトとたなの上できざんでいる音がするばかりで、あたりはしんとしずまっていました。ときどき町の人通りのたくさんな、にぎやかな巷の方から、なにか物売りの声や、また、汽車の行く音のような、かすかなとどろきがきこえてくるばかりであります。